「月額600円でアニソン5万曲以上聴き放題!」というフレーズを引っ提げて2017年3月からサービスが開始されたアニソン聴き放題サブスクリプション「アニュータ」。残念ながら、2022年7月31日にサービスが終了します。
音楽サブスクリプションサービスはSpotify、Apple Music、Prime Music、AWAなど様々あり、どれもが盛り上がりを見せる中、アニソン特化型のアニュータがサービス終了となってしまっているのは、アニソンオタクとしてはやるせない。
今回は追悼の意味も込めて、「アニュータはなぜ失敗してしまったのか」を事例を挙げて考えていきます。
まず、アニュータの5年間の歴史、そしてその間のサブスク解禁の歴史をザっと振り返ってみます。
サービス開始当初と、サービスから1年半経っての個人的な感想記事は下記参照。
ここで言う「サブスク解禁」とは、Sporify、Apple Music、AWAといった一般サブスクへの配信が解禁となったことを指します。
年表にしてみると、アニュータの外部環境がかなり変わっているのがわかりますね。
これらも含めて「アニュータが終わってしまった原因は何か」を考えてみます。
アニソンがどんどんサブスク解禁した
アニュータ発足当初の2017年は、サブスクの利用自体はそこまで浸透していませんでした。
また、アニソン関連のレコード会社やアーティスト側にも懐疑的な部分が多く、アニメ作品や声優・アニソンアーティストのサブスク解禁はそれほど多くないという現状がありました。
しかし、先ほど挙げた年表からもわかる通り、2018年から2020年にかけて一気にサブスク解禁していくことになります。
特に大きかったのは、ランティスとフライングドッグの一般サブスクでの解禁。アニュータ発足当初はこの2社はアニュータ以外でのサブスクは解禁していませんでした。しかし、解禁したことで「アニュータの優位性」がどんどん失われていくことになります。
厳密に言えば、
・ランティス楽曲の一部(yozuca*、CooRieなど)
・KADOKAWAの2020年以前のアーティスト楽曲
・アニサマの各年のテーマソング
・Wake up , May'n!の「ハートライン」
・アイマス楽曲のshort ver.
などアニュータでしか聞けないものもありますが、『ラブライブ!』や『ウマ娘 プリティーダービー』といった人気作品、GRANRODEO、fhána、TRUEといった主要アーティストは一般サブスクで全曲聴けますし、「アニュータのみの配信曲はこれだ!」というのはあまり周知もされていないので、大抵のユーザーには無関係なのかもしれません。アニュータがサービス終了した後に、これらの曲が一般サブスクで解禁されるといいのですが。
↑このあたりはアニュータでしか配信されていない
キングレコードとソニーを引き入れることができなかった
キングレコードとソニーは、結局アニュータには不参加のまま終わりました。SpotifyやAWAを始めとした一般サブスクでは聴けるのに、アニュータでこの2社の楽曲が聴けない。しかもアニュータでしか聞けなかった楽曲がどんどん一般サブスクでは聴けるようになっていく。
アニソン専門サブスクなのに他のサービスの方がいっぱいアニソンが聴けるという状況は、ユーザーからしたら「なぜ?」と思ってしまいますよね。これでは、アニュータを使い続けるメリットも少なくなるというものです。
この2社を引き入れて、一般サブスクと遜色ないラインナップに出来ていたなら、サービス終了という事態は回避できていたのかなぁ……?
大型リニューアルでUIが改悪された
おそらく直接的な終了原因はこれだと思います。
2021年9月にアプリの大型リニューアルが行われましたが、これによりユーザーインタフェースが改悪。多くの既存ユーザーが離れる結果となりました。
具体的には、
・数曲再生するとエラーでアプリが落ちる(キャッシュクリアで直る)
・作品検索機能が削除
・あいまい検索が機能しない(アーティスト名でスペース入れないとヒットしないなど)
・プレイリスト追加が画面遷移でしかできない
・引継ぎミスってプレイリスト消失する人多数
・有料会員登録しているのに無料登録と表示される
・リニューアル後、問い合わせができない期間があった etc...
今まで出来ていたことができなくなるというのは、既存ユーザーからしたらめちゃくちゃストレスなんですよね。あると嬉しい「魅力的品質」は人それぞれの価値基準だとしても、あって当然の「当たり前品質」が低いとそれだけで全員不満になるのです。(詳しくは「狩野モデル」でググって)
さすがにサービス終了間近の現時点では9月のリニューアル時の改悪から幾分かはUIは改善しましたがが、離れた人が戻ってくるわけもなく。
他にも、チケット最速先行の申し込みがなくなるなど、新規ユーザーを獲得する施策が少なくなったのもあると思います。
私の個人的な想いとしては、そこそこ利用していたのでもう少し頑張ってほしかったですが、ここまでサブスクで音楽を聴くことが標準になってしまった昨今において、アプリが使いづらいというのは終わってしまうのに十分な理由なので、サ終もやむなしと思っています。
危惧するのは、先述したようにアニュータでしか解禁されていない楽曲が他のサブスクで今後も解禁されるかというところ。ここがどうなるのか、各レコード会社の動向に注目したいです。あと、ある程度放送から年数の経った作品の主題歌系キャラソンとか円盤特典キャラソンとかサントラも解禁してくれませんかねぇ。