夏のエンタメといえば音楽フェス。アニソン業界でも大小様々なフェスが開かれていますが、その中でも日本最大級を誇るのが2005年から開催されている「Animelo Summer Live」、通称・アニサマ。今年も8月25日~27日の3日間で6万5千人を動員し、大盛況のうちに閉幕しました。
そんななか、SNSではこんなつぶやきが。
「アニソンフェスに行くよりもロックフェス行った方が今の流行りのアニメの主題歌が聴ける可能性が高いのでは?」
確かに『推しの子』や『SPY×FAMILY』、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など、昨今の流行の作品はいわゆるアニソン業界以外のアーティストが歌うことが多いのは周知の事実。
果たして上の言説は正しいのでしょうか?
ロックフェスを調べる前に、まずは今年のアニサマの内容をデータ化してみましょう。
出演者とセットリストは公式サイトに載っています。
- 開催期間・・・3日間
- アーティスト数・・・61組
- 披露楽曲数・・・159曲(メドレーはそれぞれ集計)
- タイアップ楽曲・・・149曲
- 内、直近1年以内のリリース・・・70曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『グリッドマン ユニバース』『ラブライブ!スーパースター‼』『響け!ユーフォニアム』『BanG Dream!』『リコリス・リコイル』『推しの子』『ひろがるスカイ!プリキュア』など
タイアップ楽曲は、『Paradox Live』や『BanG Dream!』などのアニメで披露されていない楽曲なども集計しています。そして、「直近1年以内のリリース」は、2022年夏アニメ~2023年秋アニメまでの主題歌を集計(新曲披露もあったため)。こうして確認すると、約半分は直近1年以内のリリース楽曲が披露されているんですね。
それではこの情報を頭に入れたうえで、ロックフェスで披露されたアニメ関連楽曲も見ていきましょう。
1. フジロックフェスティバル
新潟県湯沢町の苗場スキー場で毎年開催されているロックフェス。日本最大の野外フェスであり、今年は大小あわせて11のステージでライブが行われました。2023年の入場者数は前夜祭を除いた3日間で9万6千人。
ロックフェスはアニソンフェスとは異なり、基本的に朝から晩までどこかでライブが行われています。そのためアーティストの持ち時間も多く、有名アーティストだと10曲以上歌うこともしばしば。これは歌われる数も多いのではないでしょうか?
ルーキーステージなどはセトリ情報が少ない&アニタイを経験したアーティストが出演していなかったため、今回はメインステージである「GREEN STAGE(4万人収容)」「WHITE STAGE(1万5千人収容)」「RED MARQUEE(5千人収容)」の3つを集計しました。
- 開催期間・・・3日間
- アーティスト数・・・62組
- アニメ・ゲーム主題歌披露数・・・10曲(6組)
- 内、直近1年以内のリリース・・・3曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『平家物語』『チェンソーマン』『王様ランキング』『リズと青い鳥』『ゴールデンカムイ』『ニンジャラ』など
……あれ?思ったよりも少ない……!? アニメ主題歌を披露した具体的なアーティストを挙げると、羊文学、Vaundy、YUKI、Homecomings、eastern youth、きゃりーぱみゅぱみゅの6組。これほどまでにアニメ関連曲が少ない理由の一つとして、フジロックは海外アーティストも数多く参戦するというのが挙げられます。アニソンタイアップという観点で見ると、歌われる率が少なくなってしまうのもしょうがないのかもしれません。
いやいや、他のフェスはもう少し多いはず。次はこのフェスを見ていきましょう。
2. SUMMER SONIC(サマソニ)
東京と大阪で行われている都市型ロックフェス。今年は8月19日・20日の2日間で行われました。同日に東京と大阪で開催されていますが、例えば1日目に東京、2日目に大阪といった、両方の会場に出演するというアーティストも多いです(今年はsumika、女王蜂などが該当)。
ロックバンド以外にもアイドルやJ-POPアーティストなども出演することが多く、今年はYOASOBIや、ももいろクローバーZ、ジャニーズWESTなども参戦しています。
フジロックよりは邦楽アーティスト率が高いサマソニ。それでは集計結果を見ていきましょう。東京と大阪でセットリストに被りがあるので、集計はそれぞれの会場ごとに行いました。
[東京・幕張会場]
- 開催期間・・・2日間
- アーティスト数・・・102組
- アニメ・ゲーム主題歌披露数・・・32曲(21組)
- 内、直近1年以内のリリース・・・12曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『推しの子』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『るろうに剣心』『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』『THE FIRST SLUM DANK』『NieR:Automata Ver1.1a』など
[大阪会場]
- 開催期間・・・2日間
- アーティスト数・・・73組
- アニメ・ゲーム主題歌披露数・・・26曲(14組)
- 内、直近1年以内のリリース・・・12曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『推しの子』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』『呪術廻戦 懐玉・玉折』『ライザのアトリエ』『マッシュル-MASHLE-』など
おおっ!フジロックよりは数が増えましたし、この1年で話題の作品も見かけるようになりました。具体的なアーティストはYOASOBI、キタニタツヤ、milet、女王蜂、SEKAI NO OWARI、yama、Reol、sumika、マカロニえんぴつ、星野源、10-FEET、シユイなど。ちなみに、内田真礼などに楽曲提供しているシンガーソングライターのRIRIKOも出演しており、過去のアニタイを歌ったりしていました。
3. ROCK IN JAPAN FESTIVAL(ロッキン)
邦ロックの祭典といえば、ROCK IN JAPAN FESTIVAL、通称”ロッキン”。5日間開催は他の音楽フェスと比べても最長で、その分多様なロックバンドが名を連ねています。
- 開催期間・・・5日間
- アーティスト数・・・113組
- アニメ・ゲーム主題歌披露数・・・75曲(42組)
- 内、直近1年以内のリリース・・・29曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『推しの子』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『ONE PIECE FILM RED』『弱虫ペダル LIMIT BREAK』『呪術廻戦 懐玉・玉折』『すずめの戸締まり』『ブルーロック』など
さすがに開催期間が多いからアニメ・ゲーム主題歌の披露数は他のロックフェスと比べると多め。とはいえ、1日で考えると15曲くらいなので、サマソニとあまり大差ないかもしれません(全部のステージを見られるわけでもありませんし)。
作品名を見てピンと来た人もいるかもしれませんが、ロックフェスは出演者が被ることも多く、こちらでもYOASOBIやyama、キタニタツヤが出演。一方で、サマソニにはいなかったUNISON SQUARE GARDENやRADWIMPS、Ado、anoなどが出ていたりして、数が多い分ラインナップも多様です。
4. ライジングサンロックフェスティバル
北海道石狩市で行われている野外フェス。オールナイト開催が特徴であるほか、北海道ということもあり食も満喫できるなど開放感に溢れた会場になっています。
- 開催期間・・・2日間
- アーティスト数・・・74組
- アニメ・ゲーム主題歌披露数・・・38曲(18組)
- 内、直近1年以内のリリース・・・12曲
- 歌唱された主なアニメ・・・『よふかしのうた』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦 懐玉・玉折』『コードギアス 反逆のルルーシュ』『ブルーロック』など
サマソニとロッキンと似たような感じになりましたが、アニメ・ゲーム披露数は少し多いかな?という感じでしょうか。
まとめ
集計結果は下記のようになりました
こうして数だけ見てみると、当たり前ですがやはりアニサマが圧倒的。ロックフェスはステージが複数あり、すべてのステージを見られないことも考えると、アニメ主題歌目当てでロックフェスに行くというのはあまりメインの楽しみ方ではないのでは?とも思います。
また、ロックフェスではアニメ主題歌を過去に担当したアーティストがいても、ライブではアニメタイアップ曲を歌わないということはそこそこの頻度で発生しており、今年でいえばNovelbright、[Alexandros]、SUPER BEAVER、THE ORAL CIGARETTESなんかはその傾向(歌っても1曲とか)。
逆にUNISON SQUARE GARDEN、YOASOBI、スキマスイッチ、sumika、キタニタツヤ、yama、amazarashiなどは歌ってくれる率が高いです。まあ、夏フェス用の盛り上がる楽曲は各アーティストそれぞれ持っているでしょうし、ドラマ主題歌やTikTokなど、人気曲やバズった曲の導線はアニメだけではないので、一つに偏るということがないのも当然ではあるのですが。
最初の問いに戻りますが、「アニソンフェスに行くよりもロックフェス行った方が今の流行りのアニメの主題歌が聴ける可能性が高いのでは?」の回答としては、「聴ける可能性はあるけど、そもそもアニメ主題歌を歌ってくれない可能性も十分高い」というのが個人的見解です。
とはいえ、アニサマの3日間のセットリストの楽曲がすべてわかる自分みたいな存在はアニソン好きの中でも少数派ですし、特定のアーティスト目当てにフェスに行くという人にとっては、上記の数が多いことは利点にはならないので、そうなると一般的に認知度があるアーティストのいるロックフェスに行った方が自分が楽しめる可能性が高いとなるのも一理あるなとは思います。
ロックフェスで聴けるアニソンはあくまでもロックとしての曲であり、アニメ映像をバックで流すなど、演出も含めて”アニソンとして聴ける”のはやはりアニソンフェスの魅力。アニソンとしてのロックを聴きたいのであれば、アニサマやANIMAX MUSIXなどのフェスに来るのを待つのもいいですが、例えば「ANI-ROCK FES.」みたいな特化型のフェスに参加するのもいいかもしれませんね。