アニソンブログ ア・ラ・カルト

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個人的「良かったアニソン」10選(2023年冬クール)

 毎週数多くの楽曲がリリースされる現代アニソン業界。良い曲があっても把握できないという人も多いのではないでしょうか?昨今は「プレイリスト企画」など、インフルエンサーによるキュレーションも増えておりますが、やっぱり自分が良いと思った曲は他の人にも紹介したい。
 というわけで、今回から定期的にその月にリリースされたアニソン関連楽曲から数曲をピックアップし、自分なりに紹介していこうと思います。 

 

 

 自分の選曲基準としては次の4つを重視しています。
  ・楽曲と作品の親和性
  ・楽曲のアプローチ方法
  ・歌詞と文脈
  ・歌声の表現

 まあ、大体全部ってことですね。特に重要視しているのは「楽曲と作品の親和性」です。今回は初めての試みなので、選ぶ曲に関しては特別に2023年冬クール(1~3月)にリリースされた楽曲に拡大してお送りします。

 

 

1. 「アルカンシェル」花たん

作詞:doriko 作曲:doriko 編曲:doriko
【タイアップ】TVアニメ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』OPテーマ

 

 花たんの澄んだ歌声と、美しさすら感じる透き通るようなサウンドが印象的な1曲。お互いを思う気持ちと憧れを美しく丁寧に描いた歌詞は、曲名の「アルカンシェル(=虹)」のように、明るさ・切なさ・愛しさといった様々な色の感情が込められています。

 原作者の鴉ぴえろ先生がたびたびツイートしているように、『転生王女と天才令嬢の魔法革命』という作品に対するdorikoさんの解釈と、そこからの構成力がめちゃくちゃ高いんですよね。魔法に対して憧れを抱く王女・アニスと、魔法に愛された孤独な天才令嬢・ユフィリア、歌詞はどちらの視点で聴いてもしっくりくるのはもちろんのこと、2番のとあるフレーズではアニスの弟のアルガルドの視点になっているなど、ストーリーが進むたびに発見がある楽曲となっています。これはアニソンだからこそできる楽しみ方ですよね。

 花たんは歌い手という存在が認知され始めた黎明期から活動するシンガーで、今作がアニメ主題歌初歌唱。歌い手時代から彼女を知っている1人のリスナーとしては、遂にアニメ主題歌を歌うことができたんだなと勝手に感動を覚えておりました。カップリングの「不夜城」ではまた違う表情を見ることができるので、このCDは花たん初心者にはおすすめの一枚です。

 

2. 「アイデン貞貞メルトダウン」えなこ feat. P丸様。

作詞:やしきん 作曲:やしきん 編曲:やしきん
【タイアップ】TVアニメ『お兄ちゃんはおしまい!』OPテーマ

 

 「やしきん is GOD.」 この曲を聴いた時の第一印象はまさにそれ。一回聴いたら強く耳に残るキャッチーなサウンドと楽曲展開、リフレイン部分(サビ後半部分?)での通称”ありなしダンス”の中毒性、女の子になってしまったまひろの自我が徐々に女性的になっていく様を「アイデン貞貞」という当て字で表す類まれなるセンスなど、やしきんの得意な引き出しが惜しみなく開け放たれた1曲になっています。個人的には、基本的に女の子しか出てこないアニメなのに、イントロ部分で「ウッ‼」という野太い男性ボイスを入れるという判断をしたのは偉大だなと。いや、真面目に。普通それは入れないって。
 歌唱がコスプレイヤーのえなこと、マルチクリエイターのP丸様。という組み合わせも面白いですよね。この2人を引き合わせようと思った理由も知りたい。10年前だったらEDテーマだけでなく、この楽曲もキャラクターが歌っていたのだろうか。

 

3. 「THE SUPER STRONG S」シンボリクリスエス (CV. 春川芽生)

作詞:武宮 健 作曲:武宮 健 編曲:武宮 健
【タイアップ】ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』キャラクターソング


 『ウマ娘』の楽曲で、ここまでゴリゴリのアメリカンHR/HMを聴くとは思っていなかったぜ。シンボリクリスエスがアメリカ生まれの外国産馬ということで今回のアプローチになったのでしょうね。重低音が響くクールなギターリフや、少々荒めのサウンドアレンジ、そしてラスサビ前の暴れまくるギターソロなど、良い意味で「これぞHR/HM」という要素がこれでもかと詰め込まれています。一部のギターフレーズは思いっきりメタリカの雰囲気を感じますね。
 そしてHR/HMのサウンドをバチバチに引き立てているのが、とにかくかっこよすぎるシンボリクリスエスの歌声。説得力がある歌声と言い換えてもいいかもしれません。春川芽生さんはこれがキャラソン初歌唱なんですが、そうとは思えないくらい声に貫禄がありますね。歌が上手すぎる。

 

4. 「shiny shiny」早坂芽衣 (CV:日向もか)/成宮すず (CV:相川奏多)

作詞:sooogood! 作曲:sooogood! 編曲:sooogood!
【タイアップ】ゲーム『IDOLY PRIDE』キャラクターソング

 

 聴いていて楽しい気分になれるキュートでおしゃれなラップ曲。軽快に紡がれる2人の可愛い高速ラップは、跳ねるようにころころ転がるピアノサウンドと、時折差し込まれる華やかなブラスの音色も相まって、一本調子ではなく最後まで聴く人を飽きさせません。猫みたいに自由奔放な芽衣と、高飛車だけど寂しがり屋のすずという2人の関係性を描いた歌詞も尊いですね。こういった曲調で2人の仲を味付けするとは恐れ入った。

 

5. 「moshi moshi」青山吉能

作詞:雨野どんぐり、青山吉能 作曲:宮原康平 編曲:宮原康平
【タイアップ】なし

 

 『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとり役で一躍ブレイク中の声優・青山吉能の3月8日に発売された1stアルバム「la valigia」に収録の1曲。このアルバムは名盤だと思っているのですが、なかでも青山吉能という天才だからこそできる唯一無二な1曲がこちら。

 この楽曲は「別れる相手との最後の電話」というテーマで物語が進行していきます。あえて淡々と無機質な声で紡ぐ「電話をかける」パート、突如挿入されるメッセージアプリのコール音から気持ちがどんどん前のめりになる「コール中」「通話中」パート、不協和音を交えて表現される、相手との関係が終わってしまった「電話を切った後」パート。4局面それぞれでの繊細な感情表現は、闇深いながらもどこか耳心地が良いのですよね。その繊細さを増幅させている、浮遊感と不安感が同居する不思議なサウンドも素晴らしい。

 

6. 「眩暈の波紋」蒼唯 ノア(CV.早見 沙織) 

作詞:マイクスギヤマ 作曲:東大路憲太 編曲:東大路憲太
【タイアップ】YouTubeアニメ『ポールプリンセス‼』キャラクターソング

 

 「キャラクターソングに定評のある声優」と言えば早見沙織ですが、そんな彼女の歌うキャラソンにまた一つ名曲が生まれてしまいました。「眩暈の波紋」は、ポールダンスをテーマにしたアニメ『ポールプリンセス‼』のショーで披露される楽曲なのですが、静謐な和の雰囲気と早見沙織の歌声の親和性が見事。さらに満開の夜桜を背に優雅に舞うノアの姿と曲が合わさることで、息を呑むほどの美しさが生まれております。ポールダンス×和風という組み合わせがこれほどまでに印象深くなるとは個人的にも驚きでした。
 少しHでアングラなイメージもあるポールダンスですが、昨今はショーダンスにとどまらず、競技やエクササイズ、果ては大道芸アートまで様々な広がりを見せているのだとか。『ポールプリンセス‼』は他のキャラソンもかなりバラエティ豊かでクオリティも高いので、他のキャラクターのショーとともにお楽しみください。

 

7. 「uni-verse」オーイシマサヨシ

作詞:大石昌良 作曲:大石昌良 編曲:大石昌良
【タイアップ】劇場版『グリッドマンユニバース』主題歌

 

 みんな、『グリッドマンユニバース』はもう見ましたか?カレーのトッピング全部乗せのような、見どころが盛り沢山の映画でしたね。そんな最高の作品を彩った今作の主題歌が「uni-verse」です。

 オーイシマサヨシから主人公の裕太やグリッドマン、かつてヒーローに憧れ空想の中で世界を救いまくっていた僕たちに贈る最高の応援歌。『SSSS.GRIDMAN』『SSS.DYNAZENON』からの集大成の一曲であると同時に、『グリッドマンユニバース』単体としてのテーマもしっかり盛り込んだ楽曲に仕上がっています。

 グリッドマン同盟の拠点である「ジャンク」をさりげなく歌詞に入れたり、「独りじゃない いつの日もどこまでも」という1番サビの歌詞が、元ネタとなっている特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』の主題歌「夢のヒーロー」の歌詞を引用していたりするなど、歌詞の細かなフレーズの一つ一つにしっかりと意味があるのは、さすが作品愛に溢れるオーイシマサヨシ。「あの時代に思い描いたヒーローは きっとまだ胸の中で生きてる」という2番の歌詞も、文字通りの意味に加えて、25年もの時を経てTVアニメとして復活した『電光超人グリッドマン』という作品自体にも掛かっていてグッときます。

 もちろん、彼の作品愛は歌詞だけではありません。電脳世界を思わせる打ち込みサウンド、アカネの夢のメタファーとも取れるDメロ前のオルゴールの音色、2作品のキャラクターの世界の重なりをコーラスで表すアプローチなど、聴けば聴くほど発見があるはずです。特に多幸感と感動が溢れるサビのゴスペルコーラスの重なりは、劇場の迫力のある音響も相まって大団円感がハンパない。壮大だけど温かいこの楽曲を聴いて、自然と涙腺が緩んだ人も多いことでしょう。ライブでは観客と一緒にシンガロングしたいなあ。

 

8. 「うたごえハイシックス」うたごえはミルフィーユ

作詞:藤井健太郎(HANO) 作曲:藤井健太郎(HANO) 編曲:藤井健太郎(HANO)
【タイアップ】音楽プロジェクト『うたごえはミルフィーユ』

 

 女性声優×アカペラをテーマにしたメディアミックス企画『うたごえはミルフィーユ』の1stシングルに収録されている各キャラクターの自己紹介楽曲。これから始まる彼女たちの明るい希望と10代特有のコンプレックスと青春感が上手く合わさった1曲になっています。参加声優は綾瀬 未来、夏吉 ゆうこ、須藤 叶希、松岡 美里、花井 美春、相川 遥花。

 アカペラがテーマでありながら普通に楽器を使った楽曲ではあるものの、アカペラ特有のボイスパーカッションやハモリは随所に現れているので、アカペラ作品のコンテンツとして聴いても特に違和感はないのですよね。さらに、ギターやブラス、ピアノといった様々な楽器の音色を重ね、ポップで弾けた曲調だと強調することで、これまでに彼女たちが歌ったカバー曲で我々に届けた「音楽の楽しさ」とは別のベクトルでの「歌う楽しさ」を表現することに成功しています。どうしてもアカペラって、楽しいよりも「すごい」「上手い」という技術面の印象が強くなりがちですからね。メンバー6人のソロパートで少しずつオケやアレンジに変化が加えられているのも愛が感じられて素敵です。

 

9. 「やばきゅん♡シューベルト」DIALOGUE+

作詞:田淵智也 作曲:広川恵一(MONACA) 編曲:広川恵一(MONACA)
【タイアップ】なし

 

 DIALOGUE+の曲は、いわゆる音楽IQの高い挑戦的な曲が多いのですが、2月22日に発売された2ndアルバム「DIALOGUE+2」のなかでもとりわけ個性が爆発しているのがこの楽曲「やばきゅん♡シューベルト」です。ジャンルとしてはフュージョンに分類されるんだろうけど、ある意味「ジャンル・広川恵一」でもいいような気もします。尖ったメロとサウンドに8人のキュートな歌声が乗ったら最強というのがまたしても証明されてしまいました。
 歌詞のワードチョイスも面白いですよね。Bメロの「接近して…どうしよっか?」と何度も繰り返した後にいきなりパンチが飛び出してきたり、「ABCは違和感がないように進行しようね」「サビはサビでちゃんと盛り上げて」といった若干メタっぽいユーモラスな歌詞が登場したり、彼女たちとリスナーとの距離感が1行ごとに目まぐるしく変化している歌詞がめちゃくちゃキャッチーです。それでいて、良い意味で音やメロに身を任せてセンス先行で書き上げたような雰囲気もあるので、やはり田淵智也の才能は素晴らしいと言わずにいられない。これが「やば♡きゅん」という感情なのかも?

 

10. 「暮暮」Arika 

作詞:夏吉ゆうこ 作曲:大和 編曲:大和
【タイアップ】なし

 

 声優の夏吉ゆうこと作曲家の大和によるユニット・Arika。朝・昼・夕方・夜という時間の経過を表現した1st EP「1440」のうちの1曲は、夕方という少し疲れた時間帯がオシャレでアンニュイな雰囲気で表現されています。心に沁みるような心地いいリズム、ワウ音多めのギターや、浮遊感あふれる独特なサウンド、フックになっているBメロのミュート部分など、サウンド面でのこだわりが随所に散りばめられており、聴くたびに様々な発見があること間違いなし。
 そしてなんといっても素敵なのがボーカル・夏吉ゆうこの歌声。良い意味で尖りがない、スッと自然に心に入り込んでくるボーカルでありながら、それでいて印象に残らないわけではないという絶妙な匙加減はなかなか狙ってできるものではありません。確かな歌唱技術を持っている人がその技術をひけらかさない感じは、個人的にすごく好みです。
 Arikaの音楽は元気でポジティブというTHE・声優ソングという枠から外れていて、アーティスティックでダウナーな曲が多め。そのため、浅く広い層よりも、狭い層に深く刺さっていく音楽な気がします。1st EP「1440」は名盤なので、他の曲も併せて楽しんでほしいです。

 

 

 今回紹介した10曲は、AWAで公開中の「2023年冬クールのオススメアニソン」びプレイリスト」にも入っています。
こちらも是非とも覗いてみてください。