先日、「わかんないよ~」という、ビジネス用語とIT用語を意味不明なイラストで揶揄したツイートがTwitter上でバズりました。
わかんないよ‼️ pic.twitter.com/4SMjLznPQV
— やったね❗️ (@kirishi____D) 2020年8月24日
派生のネタもどんどん出現し、一瞬でミーム化したこのネタ。そういえば自分もわかんないなと思ったことがありました。それは、「音楽評論でよく使われるカタカタ用語」です。
ハイトーンやファルセット、フェイクといった歌唱用語、アルペジオやマイナーコードといった演奏用語は調べればわかります。問題は「ソリッド」「メロウ」「オーガニック」といった形容表現と、「ニュー・ウェイブ」「アシッドジャズ」「オルタナ」といった細分化された音楽ジャンル系用語です。
ビジネス用語は「案件がフィックスしていないから一旦ペンディング。リスケしてマイルストーンも設定してくれ」という文章があったとしても、用語を調べれば「案件が固まっていないから一旦延期。計画を再設定して、中間目標も設定してくれ」と言いたいのだと理解はできます。
しかし、「ソリッドなサウンド」を「硬い音」と訳したところで、なんとなくこう言いたいんだろうなという雰囲気は掴めますが、具体的にどういう音を指しているのか、まったくイメージできないのです。ジャンル系用語も、挙げられたアーティストの曲をいくつか聞いてもよくわからない。「これは自分の音楽力が足りないからなのか?」と落ち込むと同時に、「音楽に詳しくない人を選別している文章なのではないか?この文章きっかけで楽曲を聴いてもらおうと本気で思ってる?」と逆ギレしてしまう自分もいたりします(逆ギレ部分は完全にブーメランですが)。
わかるんですよ? 音楽という感覚的なものを言葉で表現するのは難しいので、どうしても抽象的な表現が多くなってしまうのは。「メロウ」と「柔らかい」だとニュアンスが少し異なるとかもあるでしょう。でも、それにしたってカタカナ語が多すぎではなかろうか?
もちろん、書き手と読み手の間に「ソリッドなサウンド」という言葉で伝わる共通認識があるからこそ、その言葉を文章に登場させているわけなのですが、でもそれって、その共通認識がない人たちからすれば蚊帳の外にしかならないのですよね。
勘違いしてほしくないのですが、評論のカタカナ用語の濫用について馬鹿にしたいわけではありません。あくまでも自分は理解がしたいのです。ライター仲間や音楽好き仲間がいないので、答え合わせができないのです。
例えばワインのソムリエ試験では、「円みのある」「なめらかな」といった表現がどの程度の酸味を表しているのか、しっかり規定しています。音楽評論用語をきちんと定義しろというわけではありませんが、書き手の想いをしっかり汲み取るためには、その用語がどんな音を伝えたかったのかを自分なりにわかっておきたい。
また、去年からアニソン関連の商業ライターとして活動し始めていることもあり、ここらでいい加減語彙力を上げて、表現の幅も広げていきたいんですよね。元々アニメ・ゲームからアニソン・音楽のジャンルに入ってきたということもあって、サブカル用語は大体わかるのだけれども……。
さて前置きが長くなりましたが、以下は自分が雰囲気しかよくわかっていない単語をピックアップ。
1. ソリッド
抽象的に使われやすい代表格な形容表現、個人的第1位。 多分、音楽コラムやライブレポートを5本読んだら1本で絶対に使われていると思う。
直訳すると「固体」「堅固なさま」「硬質であるさま」「うつろでなく中まで密であるさま」。硬い音と言われたら、まぁそうかなとは思うけど、どのあたりが硬い音なんだろうというのはあまりよくわかっていない。
辞書では「シンセサイザーを多用したソリッドなサウンド」が例文として挙げられているのだけど、ソリッドは単独の楽器についての表現?それとも全体的な印象?
2. オーガニック
直訳すれば「有機」。そこから転じて「自然な音」であることは想像がつきますが、その先がよくわからない。「自然な音」と言ったら環境音が真っ先に思い浮かぶけど、多分評論的にはそれではないので、ヒーリング音楽も少し違うか?
余談ですが、たまに「ナチュラルなオーガニックサウンド」と書く人がいますが、それは二重表現ではなかろうか?
3. オルタナティヴ
これは理解していない自分の方が恥ずかしいのだろうな、という認識はありつつも、未だによくわかっていない概念の一つ。
いわゆる「オルタナティヴ・ロック」が「型にはまらないロック」ということで、「オルタナティブ」も「型にはまらない」という意味なのは理解できます。ですが、現代の音楽を語る場合、そもそも基準の型がわからないので、それがはみ出しているのかも判断がつかない。基準の型がクラシックというわけではないでしょうし、いわゆるABサビの構成でもないでしょうし(それはJ-POPの特徴)。
どちらかというと、読み手としてよりも、書き手としてどういう場面で「オルタナティヴ」という単語を使えばいいかわからない、という感じですね。
4.グルーヴ
ある種の高揚感を示しているのはわかるのですが、「グルーヴ感のあるギター」とか言われるとちょっとどういうのか想像しにくい。多分使う人の感覚によっても変わってくる単語なので、そこもすごくもやっとする。
余談ですが、「グルーヴィー」という単語を見ると、『金色のガッシュ!!』のサンビームさんが思い浮かぶのは私だけですかね。
番外編:浮遊感
カタカナ用語ではないけど、これも齟齬がありそう。
私の思う浮遊感は、『アリスと蔵六』のEDテーマにもなっていた、toi toy toiの「Chant」のイントロ。
toi toy toi / Chant(kotringo edition) Music Video
でも、2019年2月に放送された「関ジャム 完全燃SHOW」のアニソン回で、オーイシマサヨシさんが『「ようこそジャパリパークへ」の「Welcome to ようこそジャパリパーク!」の部分のコード進行がふわっとした浮遊感を与えている』と解説しているんですよね。
ふわっとした浮遊感を生み出す禁断のコード進行 #tvasahi pic.twitter.com/1Ep2c14Bdm
— すてら(ディフェンスフォルム) (@Story_terrorV2) 2019年2月17日
TVアニメ『けものフレンズ』主題歌「ようこそジャパリパークへ / どうぶつビスケッツ×PPP」
自分が思っている浮遊感とまったく違う。。。
皆さんのご意見をお待ちしております。特に細分化された音楽ジャンルとか、誰か勉強会開いてくれないかな?
ホント、音楽評論用語わかんないよ~