アニソンブログ ア・ラ・カルト

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ゾンビランドサガの「ごった煮音楽」はなぜ受け入れられたのか?

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今期アニメのなかでも尖りに尖ったオリジナルアニメ『ゾンビランドサガ』。”ゾンビ×アイドル×佐賀” という一見脈絡のない組み合わせにもかかわらず、テンポの良いギャグ、アイドルアニメらしい王道な成長ストーリー、宮野真守の怪演技、伝説の山田たえなど、「毎話何をしてくれるんだろう?」という期待感のあるアニメとなっています。

そしてアイドルものということで音楽への力の入れ具合も他のアニメに比べて強く、7話放送時点でOP・EDを含めて10曲以上も披露しています。……が、楽曲ジャンルが昭和特撮、メタル、ラップ、テクノなど幅広すぎて、全体の統一感がこれっぽっちもありません!ですが、視聴者の皆さんは結構すんなり受け入れているんですよね。

よく言えば多様な、包み隠さず言えばごった煮な音楽は、なぜ受け入れられたのでしょうか?

ゾンビランドサガの音楽ってどんなの? 

まずはゾンビランドサガの音楽を振り返ってみましょう。
第1話冒頭のフランシュシュ初のライブシーンで披露された「ようこそ佐賀へ」は、歌というよりほぼ絶叫のデスメタル。ヘヴィメタルバンド・ANTHEMのギタリストである清水昭男さんが作編曲をしており、この時点で楽曲に関しての本気度が窺えます。


  

2話で初披露されたOPテーマの 「徒花ネクロマンシー」は昭和歌謡+戦隊もの+アメコミと、本編に負けず劣らずのごった煮っぷり。効果音やイントロの口上まで入っているのも特徴的ですね。さらに混ぜるか。
曲調が注目されがちですが、「枯れても走ることを命と呼べ」「骨を斬らせて 闇を断て」「心を無くすことが死(おわり)と知れ」など、歌詞のカッコよさも忘れてはいけません。特に「心を無くすことが死(おわり)と知れ」というフレーズをゾンビである彼女たちに歌わせているのって、すごくメッセージ性がありますよね。



さらに2話で話題になったのはさくらとサキのラップバトル「DEAD or RAP!!!」。お話の内容をかいつまんだ歌詞で韻を踏んでいるのもすごいのですが、ラップのリズムキープが2人とも素晴らしすぎです。



そして7話の佐賀ロックフェスティバルでのライブシーンは6話からのシリアスな流れを吹き飛ばす見事なパフォーマンスでした。雷を怖がる愛を助ける純子の本気のソロパートが光った「アツクナレ」、そして雷に打たれた後のテクノver.の「目覚めRETURNER」。特に「目覚めRETURNER」は3話のパフォーマンスとの対比にもなっており、見比べるとかなり違いがあるのがわかります。

 

他にも、卒業式を思わせるような合唱ED「光へ」ドライブイン鳥のCMソング、アイアンフリルの歌う王道アイドル楽曲「FANTASTIC LOVERS」「ゼリーフィッシュ」などバラエティ豊かな楽曲が揃っています。しかし振り返って聞いてもわかる通り、1クールのアニメでここまで音楽ジャンルがばらばらなのも珍しいくらい統一感がありません。

それでは最初の疑問に戻りますが、「なぜ統一感のないごった煮な音楽は受け入れられたのでしょうか?」 

  

根底はアイドルアニメだから?

最初はゾンビの部分がフィーチャーされがちですが、やはり根底はアイドル作品なんですよね。アイドルなんだから知名度アップのためなら何をやってもおかしくないですし、それらもすべて成長物語になりますしね。現実でもローカルCMに出るアイドルはたくさんいるし、メタルやラップを披露するアイドルもいるので、アイドルが「アイドルっぽくない」歌を歌うことも特に違和感がないのでしょう。

 

また、「コメディ作品だから」というのも大きいと思います。「ゾンビがアイドルをして佐賀を救う」というあらすじ自体が初見では訳が分かりませんし(笑)、設定がぶっ飛んでるから何が来てもおかしくはないという心構えができますよね。序盤は特にその傾向が強かったと思います。  

 

フランシュシュのメンバーのキャラクター性が幅広いから?

フランシュシュは、平成アイドル、昭和アイドル、花魁、暴走族など時代を超えたメンバーが集まっており、普通のアイドルではまずあり得ない組み合わせとなっています。メンバー自体に多様性があるのだから、音楽ジャンルにだって多様性があってもおかしくないですよね?

 

7話では、現代アイドルと昭和アイドルの価値観の違いを受け入れられない純子に対して、「無理に迎合する必要はない。愛には愛の、純子には純子の個性がある。」と幸太郎が諭すシーンがあります。多様性を受け入れ、お互いを支え合って活動するというコンセプトは現代社会へのメッセージにもなっているなと感じます。

 

やっぱりゾンビものだから?

ゾンビ作品といえば鬼才・ロメロの『ゾンビ』や、人気海外ドラマの『ウォーキング・デッド』などのパニックホラー系のシリアスなものが真っ先に思い浮かびます。そういう系統だと重いサウンドや絶叫が合うんですよね。

 

アニメでもゾンビ作品である『甲鉄城のカバネリ』『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の音楽は壮大で力強い曲が多かったり、ゲームの『バイオハザード』もかなりダークな曲が多かったりします。しかし、ゾンビ作品はそういうタイプの曲ばかりでもありません。

代表的なのはアニメ『がっこうぐらし!』のOPでしょう。作品自体はシリアスですが、キャスト4人が歌うポップな楽曲が耳に残っている人も多いと思います。

ゾンビではありませんが、死んだ女の子が生き返ってアイドルとして活動(&世界を救う)するゲーム『プロジェクト東京ドールズ』もある意味近いかも。CV:本渡楓でさくらというキャラがいるのも共通点ですしねw

 

あと、ゾンビもので歌って踊るの元祖ってこれだと思うんですよね。マイケル・ジャクソンの「Thriller」。オシャレなダンスを機敏に踊らせるという、当時のゾンビのイメージを壊したこのMVは、全世界で話題になりました。『ゾンビランドサガ』でもこのパロディは今後出てくるんじゃないでしょうか?

他にも映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』はゾンビをパロディにしたコメディですし、ディズニー・チャンネルで放送された海外ドラマ『ゾンビーズ』ではポップでハッピーなラブストーリーがミュージカルで描かれます。
つまりゾンビという題材一つをとってもかなり幅が広く、「ゾンビってホラー系しかないでしょ」と思われない下地があったからこそなのではないでしょうか?
もちろん、今作が「新感覚ゾンビアニメ」であることは間違いありませんがね。

 

 


アニメの話数は半分をようやく過ぎたばかりです。7話までではゆうぎりやリリィはあまり活躍していませんので、彼女たちの個性に合った更なる「ごった煮音楽」が増えることを期待します。
ちなみに1話から7話までに披露された挿入歌は、すべてBlu-ray第1巻の特典CDに収録されます。普通にCD売っても良かったんじゃないのかな?

 

 

さて、色々考察しましたが、受け入れられた理由は結局はこれに尽きると思います。

「楽曲のクオリティが高いから」